自己破産後の賃貸契約|現在住んでいる物件・入居審査への影響

自己破産後の賃貸契約

自己破産した後は、賃貸物件にはそのまま入居していられるものなのでしょうか。

債務整理で自己破産を選べば、一定の価値のある財産はすべて差し押さえの対象となります。今住んでいるマンションも退去しなければいけないのではないか…と感じてしまう人は多いでしょう。そこで今回は、自己破産後の賃貸契約や、その後の入居審査への影響について解説していきます。

自己破産したら住んでいる物件はどうなるか

まずは、自己破産手続きについてポイントを整理しておきましょう。

自己破産とは、経済的事情から借金の返済が難しくなり、抱えていた借金を裁判手続きによって免除してもらうことを言います。借金はまるごとカットされるため、手続きが完了すれば借金の返済義務は一切なくなります。しかしその分、車や住宅などは差し押さえの対象となり、基本的には今までとは同じ生活はできなくなってしまいます。いわゆるブラックリストにも載ってしまうため、自己破産から5年前後はローンが組めない、クレジットカードが作れないなどの不利益を受けることにもなります。

では、自己破産した本人が、賃貸物件に住んでいた場合はどうなるのでしょうか。住宅が差し押さえの対象になるなら、今住んでいる賃貸物件からも退去しなければいけないのでしょうか。答えは違います。平成17年の法改正によって、現在は、自己破産した場合でも「自己破産」自体を理由とした立ち退きはしなくても良いということになっています。貸主である大家は、借主が自己破産したからといって、強制的に契約解除を申し出ることはできません。したがって、自己破産の手続きをしたとしても、現在借りている物件からは出ていく必要はありません。ただし、家賃の滞納をしていた場合は別となります。

自己破産後の新しい物件の賃貸契約

自己破産後は、家賃の滞納をしていない場合、現在借りている物件を出ていく必要はありませんが、新しく賃貸契約を結ぶ際には入居審査に通りづらくなってしまう可能性があります。一般的には、入居審査には以下の2種類があります。

  • 物件所有者による審査
  • 家賃保証会社による審査

物件所有者つまり大家さんによる審査は、基本的に支払い能力があればあまり問題にはなりません。しかし家賃保証会社の審査は、自己破産後は少し厳しいものになるため注意が必要です。

自己破産後5年以内の場合

自己破産後、5年以内は本人の信用情報に記録が残ります。いわゆるブラックリストに登録されてしまいます(一部の信用情報機関は5年ではなく10年間情報を保管しています)。

このため少なくとも自己破産後5年前後は、賃貸契約を結ぶ際に家賃保証会社の審査が通らないケースが発生しやすくなります。自己破産後、定職についていて安定収入があったとしても、過去の記録から返済能力に疑問を持たれるからです。

では、自己破産後、5年以内に新しく賃貸契約を結ぶときにはどうすれば良いのでしょうか。対処法としては以下の方法が挙げられます。

信販会社以外の家賃保証会社と契約している不動産屋を探す

家賃保証会社にも種類があります。例えば信販系(クレジットカード会社など)の家賃保証会社は、審査の際、前述の個人信用情報を確認します。一方、独自の審査基準を持っている民間系の保証会社の場合、金融機関が参照する個人信用情報を確認しない会社もあるため、この記録が原因で審査に落ちるという可能性が下がります。

家賃保証会社との契約が不要な物件を探す

家賃保証会社不要の物件を探すのも一つの手段です。保証会社による審査がなくなるため、基本的に入居審査は物件所有者である大家さん、もしくは不動産会社のみになります。

連帯保証人を設定する

保証会社を利用しない代わりに、連帯保証人を設定するという手もあります。賃貸契約を結ぶ際、保証の方法を「保証会社を利用するか連帯保証人を設定するか」選べる場合があります。連帯保証人はいざというときに本人の代わりに家賃やその他の費用の支払いの義務を追うため、貸主からすればリスクを低減できるわけです。

公営住宅に住む

公営住宅は自治体が管理する住宅であり、民間の住宅に住めない人のためのセーフティネットとして、安価な家賃で住めるよう設定されているケースがあります。ただ、自治体によっては家族構成などの条件が厳しく設定されているところも多かったり、募集時期に限りがあったりします。希望してもなかなか入居できない場合もあることに注意しましょう。

自己破産後5年~10年以上経過している場合

自己破産から5年~10年以上経過して、個人信用情報の記録が消えていれば、過去の自己破産が原因で賃貸契約が不利になるということもなくなります。

ただし、それ以降にも公共料金や税金などの支払いが遅延したりして、信用情報に別の記録がついてしまうと、審査では不利になります。支払い能力が確かにあることを証明できなければ、審査を通るのは難しいということを認識しておきましょう。

まとめ

自己破産したとしても、家賃の滞納や賃貸借契約上の違反をしていなければ、現在契約している賃貸物件を退去する必要はありません。しかし新たに賃貸契約を結ぶ際には、入居審査で落ちてしまう可能性があるため、注意が必要です。もしそうした事態になったときは、自治体や弁護士などに相談しましょう。